日本の雇用システムの特徴は、①終身雇用、②年功型の賃金体系、③遅い昇進にあるとされます。会社に従業員を定着させ、時間をかけて育てるための仕組みだと言えます。欧米からの新技術導入など産業の大規模化に伴い、労働者を確保するため1920年代以降、大企業を中心に定着しました。
中でも年功型賃金は他国との違いが際立ちます。日本では40歳代を過ぎても給料が上がり続けますが、欧米では30歳代後半でストップします。年齢とともに生産性が上がり続けるわけではないからです。高度経済成長期には、日本型雇用がうまく機能しました。労働者は同じ会社で働き続ければ給料は上がり続け、将来も明るいと考えることができました。会社は経済成長を見越し、年齢に応じて昇給させました。
しかし、バブル経済が崩壊して低成長時代に入ると、ひずみが生じてきました。労使は中高年の雇用維持を優先したため、しわ寄せされる形で就職氷河期世代や大量の非正規社員が生まれました。こうした日本型雇用のより根源的な問題として、無限定正社員があげられます。仕事の内容や勤務地、労働時間が限定されていない就労形態を指します。辞令一つでどこへでも転勤しなければならず、残業を伴う仕事を命令されても断れません。働きすぎを助長しかねず、ワーク・ライフ・バランスや女性の活躍を阻害してきました。
人口減少や女性の活躍、ワーク・ライフ・バランス推進など企業を取り巻く環境が大きく変化しています。日本型の雇用システムは適応するための変革が求められています。職務内容などを限定したジョブ型の働き方や、働く時間帯を柔軟に決められるフレックスタイム制を導入した企業は、時間当たりの労働生産性が高まる効果が出ています。多様で柔軟な働き方を広げるためには、自宅などで働くテレワークの普及が大切です。集中できる環境を選んで働けるので生産性が高まります。
(2019年9月11日 読売新聞)
(吉村 やすのり)