これまで、日本産科婦人科学会の体外受精・胚移植に関する見解では、「被実施者は婚姻をしており」としていたが、今回の改訂で、「婚姻をしており」を除き、「被実施者は挙児を強く希望する夫婦で」とした。
体外受精を希望する男女は婚姻をしていることが必要条件であった。婚姻関係にない男女の間で生まれた子どもは非摘出子とされ、これまで遺産相続において不利益を被むっていた。先の最高裁の判例では、摘出子と非摘出子との間で差別がなくなることもあり、婚姻関係にない男女でも体外受精を実施することができるとした。
事実婚の夫婦で体外受精が行えないのは、自律の原則に反するとの批判を受けていたが、日本産科婦人科学会が体外受精の適応を婚姻関係のある夫婦に限っていたのは、摘出子と比べ婚外子に法的不利益があることに起因していた。生まれた子どもに法的な不利益がある以上、事実婚の夫婦に体外受精を推奨することはできないとの立場からである。婚姻関係にない男女においても、本人達が夫婦であると申告すればこれまでも体外受精は実施されていたのが実情であった。
(2014年1月16日 読売新聞)
(吉村 やすのり)