日本酒の輸出は、新型コロナウイルス禍などの影響はあったものの長期的には増加傾向にあります。和食ブームなどを背景に人気が高まり、2024年の輸出量は、米国や中国向けなどを中心に10年前より9割増えています。2024年の輸出金額は434億円と、前の年より6%増えています。国内消費の低迷もあって、2023年の出荷量に占める輸出の割合は7%と、10年前の約2.5倍になっています。国税庁の調査による2023年の都道府県別輸出量は、大手が集まる兵庫県が最も多く、京都府、山口県の順でした。
2024年末には、日本の伝統的酒造りがユネスコ無形文化遺産に登録されました。同じく無形文化遺産となっている和食の広がりもあって、これまで関心が薄かった酒蔵が輸出に目を向ける機会も増えています。多様な酒蔵があることが日本酒の魅力の1つですが、規模が小さいと継続的に輸出する余力が乏しいのも事実です。ITの進化などで、小さい蔵でも言語や距離の壁は低くなっています。酒蔵が自らの酒のストーリーを現地で伝えられるように、情報発信などの支援を一段と強化する必要があります。
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(2025年2月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)