これまでの高血圧の診断基準は、最高血圧が140㎜Hg以上、最低血圧が90㎜Hg以上でした。日本人に最も多い生活習慣病と呼ばれ、国内の患者数は、推定で約4,300万人に上っています。自覚症状がないのですが、脳卒中や心筋梗塞など脳心血管病による死亡の最大の要因で、サイレントキラー(静かなる殺し屋)とも呼ばれます。
日本高血圧学会は、今年、高血圧治療ガイドラインを改訂しました。75歳以上はこれまでの150㎜Hg未満から140㎜Hg未満に、74歳以下は140㎜Hg未満から130㎜Hg未満に引き下げました。薬の治療開始の基準は、従来通り140㎜Hg以上としています。血圧は時間帯や環境によって変動しますが、とくに高齢者では変動が大きくなりがちです。診察室では高めに出ることが多いため、家庭で朝と夜測定して、記録した血圧も参考になります。
米国立保健研究所は、50歳以上を対象にした研究で、降圧目標120㎜Hg未満と、140㎜Hg未満のグループに分けて経過を追っています。すると約3年後、120㎜Hg未満を目指した人の脳心血管病の発症率が25%、死亡率は27%と低かったとしています。75歳以上に限っても同じ傾向でした。80歳以上が対象の欧州の臨床試験では、降圧利尿薬を使って150㎜Hg未満を目指すと、脳心血管病の発症率は34%、死亡率は21%下がりました。さらに、心臓の血液を送り出すポンプの機能が衰え、血液の流れが滞り、息切れやだるさなどが出る心不全になる率が64%も下がっています。
日本高血圧学会は、減塩推進東京宣言を10月に発表しています。食塩摂取量について、1日6g未満を目指します。学会のガイドラインは、生活の改善ポイントとして、野菜や果物を増やす、お酒は男性で1日1合程度、女性はその半分まで、禁煙、肥満の人は、減量や運動などを挙げています。
(2019年11月6日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)