日韓はともに少子化に苦しんでいます。合計特殊出生率は、OECD加盟国のなかで最下層にあります。両国の政府がこのほど発表した2021年の出産動向の統計で、いずれも前年実績を下回り、少子化が加速しています。両国に共通する構造的な問題は、性別役割分担意識の強さが、女性に結婚・出産をためらわせる元凶になっていることです。
厚生労働省は、2月に速報値として、2021年の出生数が84万2,897人だったと発表しています。前年比約3万人も減り、過去最少となっています。2021年の実績値は6月に発表されます。出生数の減少は著しく、2020年に1.34に落ち込んだ出生率が回復する兆しは見えていません。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、出生数は世界的に落ち込んでいます。しかし、日韓が共に少子化に沈む理由はほかにもあり、それが社会に根強い性別役割分担意識です。夫は外で働き、妻は家庭を守るという考え方に両国とも約4割が賛成しています。女性は、仕事より子育てを優先すべきだとする人も、日本で38%、韓国で40%に上っています。
家事・育児などの無償労働に1日当たり、どれだけ時間を割いているかといったOECD調査では、日本は男性41分に対して女性224分、韓国は男性49分、女性215分です。女性は男性と比較して日本は5.5倍、韓国は4.4倍も家事・育児等に時間を費やしています。OECD平均1.9倍を大きく上回り、男女の不均衡はOECD加盟国の中でも突出しています。
経済発展に伴い共働きが広がるのは自然の流れです。欧米など性別役割分担意識が強くない国は、職場でも家庭でも男女それぞれが応分の役割を果たすようになり、スムーズに共働き社会に移行しています。性別役割分担が残る社会では共働きとの齟齬が生じて、女性は合理的な選択肢として子どもを産まなくなると言われています。性別役割分担にくさびを打つ政策をどれだけ早く実行できるか、少子化が加速している日韓両国に残された時間はありません。
(2022年4月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)