早期・希望退職は、企業の業績悪化や組織再編を理由に、定年前に退職社員を一定期間募る制度です。通常は会社都合の退職で、退職金増加や再就職先の斡旋といった優遇措置もあります。
新型コロナウイルス下、国内では早期退職者を募る企業が相次いでいます。東京商工リサーチによれば、今年10月末までに72社、人数は1万4,505人に上っています。特徴は黒字企業が約4割を占めています。企業は、先が見通せず、体力のある間に再編を図ろうと先手を打っているとされています。海外では転職は当たり前であり、希望退職で増額された退職金を得ようと考える人は多くなっています。
早期退職を検討する際、重要なのはやはり家計です。まず支出入の見極めが不可欠です。いつ退職し、どこで誰とどう暮らすか、3W1Hに当てはめて考えるのがポイントとされています。退職時の年齢は、退職金や年金に影響し、居住地の物価は生活費に関わります。配偶者の就労状況や子どもの年齢、退職後の暮らしぶりによっても支出入は変わります。住宅手当や健康診断、財形貯蓄など、福利厚生も受けられなくなってしまいます。
早期退職は新たなキャリアを目指すなど、人生の活力につながる可能性があります。しかし、家族への影響も大きいだけに、家族で老後の過ごし方や家事の分担を話し合い、お互いが納得することが大切です。専門家のアドバイスを受ける必要があります。
(2021年12月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)