大阪大学の研究グループは、大きさ0.5㎜未満の早期乳がんを、電磁波を使って鮮明な画像に映し出すことに成功したと発表しています。乳がんは、がん細胞が乳管・小葉の中にとどまる場合にステージ0、しこりの大きさが2㎝以下でリンパ節転移がない場合にステージ1とされます。腫瘍の範囲が小さい場合にも、手術は必要です。現在は、採取した細胞を染色して診断していますが、電磁波であるテラヘルツ波を使えば素早く、小さながんを発見できる可能性があります。
チームは、非線形光学結晶と呼ばれる特殊な結晶にレーザー光を当てると、電磁波の一種で、光と電波の中間ほどにあたるテラヘルツ波が発生する現象に注目しました。結晶の上に乳がんのサンプルを置いて下からレーザー光を当て、サンプルを通り抜けたテラヘルツ波を画像に撮ると、0.5㎜未満の乳がんをはっきりと識別できました。また、早期の乳がんと進行した乳がんを見分けることができました。
この方法は原理的には乳がん以外のがんでも使えるとされています。テラヘルツ波は、正常な組織とそうではない組織を迅速に判別できます。病理診断の大きなサポートになることが期待されます。
(2020年10月26日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)