暑さによる経済損失

 職場での熱中症による死傷者数は年々増加しており、労働生産性への影響が無視できなくなってきています。国際医学誌ランセットなどのグループの報告書によれば、暑さによる作業効率の低下などで、日本の建設業の従事者は労働時間の35%を失い、潜在的な収入の約4割を受け取れていないと試算しています。他の業種も含めた日本全体では22億時間、約375億ドル(約5.4兆円)分の収入を喪失しているとされています。暑さによって失った労働時間は、1990~1999年の平均から1.5倍に増えています。

 健康被害も深刻です。厚生労働省によれば、2024年の職場での熱中症死傷者は1,257人と、2015年と比べて2.7倍に増えています。建設業と製造業が4割程度を占めています。厚生労働省は、改正労働安全衛生規則を施行し、職場での熱中症対策を事業者に罰則付きで義務付けています。熱中症の恐れがある労働者を見つけた際の報告体制の整備や対応手順の作成などを促しています。

 建設現場などで働ける時間が減れば、手取り減につながりかねません。外出控えを通じて個人消費を下押しする恐れもあり、日本経済のリスク要因となっています。猛暑や水不足は葉物野菜などの生育不良、コメの不作を起こす可能性があります。

(2025年7月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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