更年期ホルモン療法

女性は閉経前後の更年期になると、女性ホルモンの分泌量が激しく上下しながら減少していき、自律神経の働きが悪くなります。それに伴い、発汗、動悸やめまいなど様々な症状が現れます。顔や上半身が急に熱くなるホットフラッシュは、最も多い症状の一つです。HRTは、足りなくなった女性ホルモンのエストロゲンをのみ薬などで補い、これらの症状を改善させます。 更年期症状は個人差が大きく、不眠やイライラ、気分の落ち込みなどに長期間苦しむこともあります。HRTはこれらを緩和させる効果や、骨粗鬆症の予防、皮膚の乾燥を防ぐ効果もあります。しかし、HRTで再発のリスクが高まる恐れがある乳がんを患った人や、血栓症の既往がある人などは治療の対象になりません。
2002年、米国でのHRTの大規模臨床試験で、心筋梗塞のリスクが上がったと報告されました。しかし、この試験の対象者は、更年期に該当する50代前半は1割未満で、閉経から長期経過した60歳以上が7割以上を占めていました。高齢者の結果を一般化したことが問題だったとされましたが、HRTの冬の時代がしばらく続きました。その後、各国で研究が続けられた結果、国際閉経学会は、HRTの開始が60歳未満または閉経後10年未満の女性は、心筋梗塞のリスクを増加させないとしています。乳がんとの関連についても研究が進み、乳がんリスクに及ぼすHRTの影響は小さいとした上で、5年以上続けた場合のリスクの上昇は、肥満や喫煙、アルコールの摂取などと同等かそれ以下としています。

(2018年12月12日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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