女性が閉経を迎えるのは50歳前後が多く、閉経を挟む45~55歳頃を更年期と呼びます。卵巣の働きが低下して女性ホルモンの分泌が急減し、不調が出るのが更年期症状です。顔のほてりやめまい、発汗、頭痛などの身体症状に加え、憂鬱な気分や不眠、集中力の低下など精神面の変化がある人もいます。個人差は大きく、症状が出ない人もいます。
女性ホルモンの減少に伴う更年期の不調に苦しむ中高年女性は多いにもかかわらず、女性ホルモンの補充する治療法など対処法があるのに、理解が進んでいないことが問題です。NHKなどの調査によれば、3年以内に更年期症状を経験した女性は、50~54歳で52%、45~49歳で35%を占めています。このうち受診しなかった人は7割近くに及んでいます。
症状を我慢する状態が続く一方で職場の理解や支援が得られず、仕事との両立に悩む女性は多くなっています。降格や昇進辞退する人もいます。更年期症状が原因で離職した女性は、過去3年間で46万人にも達しています。女性の離職が1年続いた場合の経済損失は、4,200億円にのぼります。2021年の労働力調査によれば、45~54歳の働く女性は735万人にのぼり、就業率は8割近く、働く女性の4分の1を占めるこの世代の健康は、女性やその家族だけではなく、職場にも影響する問題です。
更年期世代は、管理職など職場の中核を担う年代でもあります。社員の健康は経営課題だという認識が広がる今、女性特有の健康課題への対応も不可欠です。更年期について理解を深めたり、休暇制度を整えたりする企業も目立ち始めています。更年期世代の女性に対して社会的関心が向けられてこなかったため、国も今後、更年期を含め女性の健康を、生涯にわたり包括的に支援する法の整備を目指すとしています。
(2022年5月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)