わが国の最低賃金の水準は、日本全体の賃金の伸びを上回るスピードで上がってきています。最近では労働者のうち700万人程度が最低賃金の近くの金額で働いています。厚生労働省は、最低賃金を議論する時期にあわせ、受け取っていた時給が引き上げ後の最低賃金の金額を下回っていた労働者の割合を影響率として算出し、公表しています。
従業員30人未満の中小・零細企業について、2024年度の影響率は23.2%でした。前年度より1.6ポイント上昇しました。従業員が5人以上の事業所全体では8.8%で、同じく前年度より0.7ポイント上昇しています。中小・零細企業では、現在5人に1人以上が最低賃金に近い水準で働いています。中小・零細における影響率は、10年前の2014年度は7.3%でしたが、10年間で3倍以上に急拡大しています。20年前の2004年度は僅か1.5%でした。
法人企業統計調査をもとに労働分配率を算出すると、2024年度は資本金10億円以上の大企業は36.8%でしたが、1,000万~1億円未満の中小企業は2024年度に70.2%と格差は大きくなっています。下請け事業者がコスト上昇分をどれだけ販売価格に転嫁できたかを示す価格転嫁率も、中小企業庁の調べで52.4%で、価格転嫁は道半ばです。

(2025年7月23日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)