最低賃金と労働生産性

日本の賃金が世界で大きく取り残されています。過去20年間の時給をみると、日本は9%減り、主要国で唯一のマイナスとなっています。国際競争力の維持を理由に賃金を抑えてきたため、欧米に後れを取ってしまいました。低賃金を温存するから、生産性の低い仕事の効率化が進みません。1人の働き手による1時間当たりの成果を示す生産性の上昇が、賃上げには必要とされています。
わが国は、先進7ヶ国の中では最も生産性が低くなっています。OECD加盟国36ヶ国で20位という低位置にあります。日本の企業が賃上げに慎重な姿勢を続けてきたことが、生産性の低迷を招いたともいえます。低賃金を温存するから、生産性の低い仕事の自動化・効率化が実施されず、付加価値の高い仕事へのシフトが進みません。その結果、生産性が上がらずに賃金も上がりません。いわば貧者のサイクルに日本は陥っています。しかし、世界的にみて劣る日本の生産性を上げていかないと、国際競争に勝ち残れません。働き手の意欲を高め、優れた人材を引きつける賃金の変革により、付加価値の高い仕事にシフトしていく潮流をつくり出すことが大切です。

 

(2019年3月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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