内閣府の分析によれば、一般労働者の中央値に対する2022年の最低賃金の比率は、フランスと韓国が60.9%、英国は58.0%、ドイツは52.6%でした。日本は45.6%と主要国を下回っています。日本の最低賃金は、厚生労働省の審議会などの議論を経て決まります。これまで段階的に上げてきており、2012年の38.3%から2022年に45.6%まで上昇しています。
正規雇用者との比較だけでなく、実額としても日本は国際的に低くなっています。OECDによれば、2022年の1時間あたりの名目最低賃金は、月平均でフランスが10.85ユーロ、ドイツが10.52ユーロ、英国が9.35ポンドで、2022年のレートで円換算すると、それぞれ1,500円前後となります。日本は、2023年度に全国加重平均で961円から1,004円に上げたものの、仏英独に比べて3割以上、低い水準です。
インフレや賃上げの動向次第で正規労働者の賃金水準が変われば、最低賃金をとりまく環境も変化します。そのため、州ごとに最低賃金を決めている米国では、消費者物価指数などに連動する物価連動制を導入する州が増える傾向にあります。最低賃金の引き上げを進めつつ、上昇によって女性が就業調整しないように社会保険などの制度も見直す必要があります。
(2024年3月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)