今年度の最低賃金が、全国平均で31円引き上げられることになり、急激に進む物価高を背景に引き上げ幅は28円だった昨年度を上回り、過去最高額を更新しています。上昇率も3.3%で過去最大となりました。目安通りに改定されれば、最低賃金の全国平均は961円(現在は930円)となり、東京都、神奈川県に次いで、大阪府で初めて1,000円台に到達します。
近年は、全国加重平均では年3%程度の引き上げが続く一方、地域間格差は拡大しています。都道府県の最高額と最低額の差は現在221円で、15年前の2倍以上に広がっています。一番高い東京都では1,041円、一番低い高知県と沖縄県では820円です。大企業が多くて賃金が高く、生活費も多くかかる都会ほど金額が高くなっています。
最低賃金の引き上げが進むことで、企業への影響も大きくなっています。最低賃金に近い金額で働く社員は多く、毎年賃金を上げていかなければなりません。賃金が改定後の最低賃金を下回ることになる労働者の割合を示す影響率は、中小零細企業で2011年の3.4%から、2021年の16.2%へと上昇しています。それだけ企業の人件費負担は増え、経営を圧迫しています。
(2022年8月2日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)