スタートアップ企業の資金調達は、成長段階によって投資家が異なります。日本では、事業が軌道に乗ったスタートアップの成長をさらに加速させる資金の出し手が少なく、事業基盤が弱いまま上場に至る事例が目立っています。事業モデルが軌道に乗り業績も黒字化してきたスタートアップに、量産投資や製品・サービスのシェア拡大といった急成長に必要な大型のリスクマネーを提供する投資家が不足しています。レイターステージ(成長後期)と呼ばれ、米国では資金流入が拡大して数多くのユニコーンを生んできています。
内閣府の資料によれば、ベンチャーキャピタル(VC)投資全体に占める成長後期型の割合は、米中が約7~9割に達しています。日本は4割弱にとどまります。日本の新興企業は未上場の段階で大きなリスクをとれず、経営基盤が弱いまま早期の株式公開を迫られています。上場時の企業価値が小さければ、十分な成長資金を調達できません。1社あたりの調達額は、米国の450億円超に対し、日本の旧東証マザーズは14億円です。
米国ではVCに育てられた企業が上場すると、次は機関投資家の視点で経営をチエックされます。一方、日本の新興市場は個人投資家が中心で、経営者はプロの投資家と対話しながら成長することができません。株価が不安定になりがちで、経営が短期目線になるといった課題も指摘されています。
政府が昨年11月にまとめたスタートアップ育成5カ年計画では、スタートアップへの投資額を10兆円規模にまで増やす目標を掲げています。国内の大手金融機関が投融資に乗り出せば、国内外から新たなリスクマネーを呼び込む効果も期待できます。
(2023年7月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)