将来の妊娠・出産に備えて自身の卵子を凍結する未婚女性が増えています。現時点ではパートナーがいなくても、あらかじめ卵子を冷凍保管しておけば妊娠の可能性を残すことができます。キャリアとの両立支援の一環として費用を補助する企業が増えているほか、東京都も10月から助成制度を始めています。
加齢とともに卵子は老化して妊娠しにくくなります。凍結すれば若い時の状態の良い卵子をタイムカプセルのように長期間保管し、妊娠したいタイミングで融解して体外受精に使えます。高齢出産のリスクは伴うものの、妊娠率の低下は避けられます。
初診の検査で卵巣の中に残る卵子の数や感染症の有無などを調べます。問題がなければ、月経周期に合わせて複数の卵子ができるよう排卵誘発剤などの薬剤を投与します。育った卵子は針で吸引し、液体窒素で冷凍保管します。卵子凍結には、排卵誘発剤の副作用で腹水がたまるといった卵巣過剰刺激症候群のリスクもあります。
東京都は、都内在住の18~39歳の女性の卵子凍結に対し、最大30万円の支援を始めました。少子化対策の一環として凍結卵子を使った体外受精にも1回あたり25万円を上限に助成します。卵子凍結を手がける医療機関は増加しています。東京都の調査によると、健康な女性の卵子凍結を引き受ける都内の36医療機関のうち、半数近い17医療機関は2021年以降に開始していました。都の助成開始を受け、参入する不妊治療クリニックも多くみられます。
東京都の調査では、卵子凍結した女性4,567人のうち5割弱は、30代後半で、30代前半は1割強です。妊娠可能性を高めるには30代前半までの採卵が望ましいのですが、ギャップがあるのが実情です。実際に凍結卵子を使用したのは1割弱に過ぎません。使用されなかった凍結卵子をどのように取り扱うかについても検討が必要です。
(2023年11月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)