2020年の国勢調査での都道府県別の25~34歳のシングル男女人口をみると、シングル男性の余剰が大きいのは栃木県の1.51倍で、男性の約6.9万人に対して女性約4.6万人です。以下、茨城の1.49倍、富山の1.45倍と続きます。逆に男女バランスが最も取れていたのは、鹿児島で1.03倍、以降は奈良の1.07倍、福岡の1.08倍です。男女比が大きいことは、女性が都市圏に流れていることを示しています。
高校卒業後に希望する進学先が地元になく、東京圏に進学することになります。東京圏で進学を決めた時点で、54.5%は地元に戻る気はないとされています。地元に就職しない理由としては、やりたい仕事、やりがいのある仕事が地方では見つからないが58.9%、東京圏と比べて年収が少ないが56.1%にみられます。女性は進学時点で将来のキャリア設計もしっかり考えており、地元にはその受け皿が限られることが問題となっています。
シングル男女比格差が大きい上位の栃木、茨城、愛知、静岡などは製造業が強く、共働きが主流となった現在、男性が主力となって働く製造業の強い土地柄は、女性が能力とやる気を発揮できる勤務先が限られてしまっています。しかし、産業構造的に難しいからと手を打たずにいたら、女性の転出超過は止められません。女性は働きやすさよりも働き甲斐を求めて、移動・転居する特徴もみられています。地方においても、能力を生かしてキャリアアップが可能な職場を増やさないと、女性の流出に歯止めがかからず、地方の未婚化、少子化は今後一層深刻になります。
(2021年12月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)