国立社会保障・人口問題研究所は、5年ごとに結婚や出産に関する出生動向基本調査を実施しています。2021年の調査データによれば、18~34歳の未婚者で、いずれ結婚するつもりと答えたのは、男性が81.4%、女性が84.3%でした。2015年の前回調査より、男女ともそれぞれ4.3ポイント、5.0ポイント下がっています。
生涯未婚率は、45~49歳と50~54歳の未婚率の平均値です。2020年国勢調査での生涯未婚率は、男性が28.3%、女性17.8%でした。フランスは、男性が27%、女性が22%、スウェーデンは、男性が33%、女性が27%のように、世界的な傾向ではあります。しかし、欧米では婚姻届を出さない形のカップルが一定数おり、日本の事情とは異なります。
できない理由はやはり経済面です。雇用の非正規化が進み、安定した収入が見込みにくい層が増えたことで、踏み切れない人も増えたようです。しない理由は、気楽だからです。独身生活の利点は、行動や生き方が自由と答えたのは男性が70.6%、女性が78.7%ともにトップでした。特に女性にとっては、因習的な性別役割分担が残る現状で結婚すると、家事・育児や嫁の役割が求められ、自由を束縛されると考えています。
男女ともに共働き志向が強まっています。結婚相手に求める条件として、未婚男性の48.2%が、女性の経済力を挙げています。一方で、家事・育児の能力や姿勢を求める回答は、91.5%に達しています。女性側だけに外での稼ぎと内助の功の両方を求めるのは虫が良すぎます。共働き夫婦の1日の平均家事時間は、妻が178分に対して夫はわずか22分に過ぎません。こうした実態が、女性に結婚をためらわせています。未婚の理由として、性別役割分担意識もその一因です。伝統的な家族規範が根強い地域から若い女性が流出しています。本当に結婚したいなら、男性は行動で示すべきです。
(2022年11月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)