未病という概念

未病とは古代中国で生まれた概念です。日本東洋医学会によると、およそ2千年前の前漢の時代に出版された医学書である黄帝内経に、未病という考え方が示されています。治療に秀でた医師は、目の前の患者の体質を考慮し、次に起こる病態を予想し、手を打つことで発生を未然に防ぐと伝えています。上工とされる優れた医者は未病を治すとされています。健康と病気の間の状態である未病段階で、保健指導などを効果的にできれば、医療費抑制に寄与する可能性も出てきます。

神奈川県は、未病を「健康か病気かの二分論ではなく、健康と病気を連続的に捉える考え方」と定義しています。特定の疾患予防にとどまらず、より健康な状態に近づけていくことが、未病の改善となるとしています。今や行政の医療サービスは限界に達しています。未病段階の人々に健康増進につながるサービスを提供できれば、危機的な状況に陥っている医療保険財政の改善につながることが期待されます。病気にならないよう自ら努力しやすくする社会を築くことこそが、一人ひとりの生活の質の向上につながります。

(2018年3月26日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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