最新の遺伝子検査技術を使い、診断がつかない病気を突き止める取り組みが広がっています。未診断疾患イニシアチブ(IRUD, Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases)は、診断が難しい患者とその両親の遺伝子を最新の装置で解読し、そのデータを集める取り組みです。すでに知られた希少疾患の原因遺伝子と照合し、診断をつけます。同じような取り組みは米国や英国などにもあり、国内外のデータベースと情報を共有することで、新たな病気が見つかることもあります。かかりつけ医が、大学病院など全国に37カ所あるIRUDの拠点病院に患者を紹介します。拠点病院の複数の複数の診療科の医師が、遺伝子検査の結果をみて診断を下します。検査は5~10㎖の血液をとるだけですみ、研究費用で賄われているため患者の費用負担はありません。
診断が難しい病気は、遺伝子の変異が関わる場合が多くなっています。遺伝子の変異による病気は8千種類以上あるといわれていますが、うち原因遺伝子が分かっているのは約5千種類だけです。こうした病気は診察経験のある医師が少なく、原因不明と言われる患者が少なくありません。IRUDは2015年に始まり、2019年3月までに約3,200人の遺伝子を解析しています。約4割の病気を突きとめ、そのうち42例は原因遺伝子が特定されていなかった新しい病気でした。稀な病気の原因遺伝子の特定が、患者の多い一般的な病気の治療法や薬の開発につながることもあります。
(2019年9月25日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)