東京一極集中

安倍内閣が重要課題として取り上げている東京一極集中是正は止まりそうにない。地方からの東京への若者の人口流入が少子化に拍車をかけていることは、まぎれもない事実である。2013年の東京の合計特殊出生率は、1.13と全国最低である。東京は人口過密で住居や子育て環境が地方よりよくない。わが国のデータでは、人口密度の高い地域ほど出生率が低いという逆相関の関係にある。出生率の低下は、非正規雇用の拡大で将来の不安度が増し、仕事と子育ての両立ができない、子育てのための教育資金の負担増などが原因である。

 しかしながら諸外国では、日本と逆に人口密度の高い地域ほど出生率に高いというデータがでている。パリ、ベルリン、ロンドンなどの大都市では、人口が増えているが、出生率の低下はみられず、逆に上昇している。わが国において、若者が大都市に集中するトレンドを止めることはなかなか難しい。とすれば、地方再生とともに大都市にいる若い世代に出産・子育て支援を充実させる政策も考えなくてはならないかもしれない。子育てのための現金給付ではなく、現物給付に政策を集中すべきである。

(2014年10月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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