新型コロナウイルス禍を契機に、東京一極集中が変化の兆しを見せています。東京都の人口は、2020年7月から8カ月連続で転出超過となっています。転入超過が24年続いたことを考えると画期的な出来事です。都からの転出者は、東京圏内の神奈川、埼玉、千葉の3県に多いのですが、東京圏からの転出も2020年は9千人増えています。内閣府の2020年12月の調査では、東京圏の若年層の約4割が地方移住に関心を持っています。
2015~2019年度の地方創生第1期は、東京圏に人口が集中する傾向が変わりませんでした。ところが、コロナ禍という大変な災いが、東京をはじめとする大都市への人口集中問題をあぶり出し、多くの国民が否応なくテレワークを経験することになりました。東京一極集中がコロナ禍で是正される可能性が出てきています。
政府も2021年度、地方創生に資するテレワークをさらに推進しています。自治体のサテライトオフィス整備を支援する交付金を創設し、地方に移住して起業・就業する人に支給する支援金の対象に、テレワークで東京の仕事を続けながら移住する人も追加しています。東京圏に立地する企業に勤めたまま、地方に移住して仕事ができるのは、転職なき移住とも言えます。これまで地方移住の大きなネックだった東京並みの所得とやりがいのある仕事が、地方にはないという課題がクリアできます。
(2021年4月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)