政府が2014年末に決定した地方創生の総合戦略は、今後加速する人口減少を背景に、2060年に1億人程度の人口の維持を目指し、出生率の上昇と東京一極集中の是正を二つの柱に掲げていました。
最重要目標の東京一極集中の是正は、成果が上がっておらず、むしろ悪化しています。2019年の地方から東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)への転入者数は約49万8,000人で、2015年に比べて約1万人増加しています。東京圏から地方への転出者数は約35万2,000人で、約1万6,000人減でした。この結果、東京圏への転入超過は、2015年の1.2倍にあたる約14万6,000人に拡大しています。一方で、地方での若者の雇用創出数は、2015年から24万人増の34万人で目標を達成しています。
雇用などの目標は進歩しているのに、なぜ一極集中が加速しているのでしょうか。2019年の15~29歳の東京圏への転入超過数は約13万2,000人で、全体の9割を占めています。2015年から2割ほど増えています。この多くは、大学などへの進学や企業への就職です。雇用全体の量をある程度確保できても、若者が希望する職種が足りていないと思われます。働き甲斐のある仕事や魅力ある進学先を作り、若者の地方への定住希望をいかに叶えるかが課題です。
(2020年7月23日 読売新聞)
(吉村 やすのり)