東京都の一極集中の是非

 地方創生を考える上で、東京都の一極集中が問題となっています。確かにコロナ前の2019年までは10万人規模の東京都の人口増の7割前後は日本人が占めていました。2023年は7万人あまり増えたうち9割以上が外国人でした。国内の地域間の転出入に焦点をあてるだけでは、政策の力点がずれる可能性があります。

 財政力の格差もしかりで、企業の本社がひしめく分、税収が突出しています。その景色は他県が国から交付税をもらっていることを考慮すると一変します。税収と交付税などを合わせた人口一人あたり一般財源額は、全国平均と同水準になってしまいます。

 企業や労働力の移転を促す地方創生施策について、成長戦略とどう整合させるかという視点がないように思えます。東京の一人あたり労働生産性は、2021年に1,182万円で、他県平均の815万円を約4割上回っています。高付加価値の稼げる仕事は大都市ほど多いためです。この差を埋めないまま単純に地方に人材を移すだけでは、全体の成長率を押し上げることになってしまいます。

 東京は日本の成長エンジンでもあります。一極集中の虚実と功罪は丁寧に見極めることが大切です。

(2024年11月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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