東京都の少子化対策

 東京都では、小池百合子知事が打ち出したチルドレンファーストを掛け声に、高校授業が実質無償化されたほか、保育料の無償化も9月から第1子まで拡大されます。所得制限なく18歳までの子どもに1人あたり月5,000円支給する018サポートも始まっています。

 こうした支援策は、事業単独で数百億円以上の費用がかかるものばかりで、いわば量的な少子化対策です。結果的に2025年度予算は子育て関連が約2兆円に上ります。都はこれまで卵子凍結や無痛分娩といった出産の選択肢を広げる支援策を全国に先駆けて導入してきました。2025年度からは放課後の学童保育に独自の認証制度を導入し、運営費を補助します。体調不良の子どもでも預けられる病児保育への支援策も強化します。

 しかしながら、2024年の都の合計特殊出生率は0.96で、全都道府県で唯一、1を割り込んだ2023年からさらに下落しています。東京都の子育てに関する経済的負担の軽減は、ほぼコンプリートに近い状況にありますが、出生率の向上にはつながっていません。若い世代にとって、東京都の量的少子化対策が効果的とは思えません。

 都が進める子育て支援などの施策が、周辺自治体の不興を買う場面も目立ってきています。好調な財政状況を背景とした手厚い支援策はバラマキとの批判もあり、他自治体から東京一極集中への反発もあります。

(2025年6月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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