東京都心部の人口増加

 東京圏は東京都心から放射状に延びる鉄道の沿線開発によって人口を増やし、地方から東京に流入した人口の受け皿となっています。国連がまとめた世界の都市圏の人口調査によれば、東京圏は約3,700万人で、2位のインド・デリーや3位の中国・上海を上回っています。東京圏の広がりは昼間人口からもみてとれます。5年ごとの国勢調査をみると、東京都の昼間人口は戦後一貫して増え続け、2020年に1,631万人達しました。夜間人口の1,404万人を200万人も上回っています。

 しかし、東京圏は外に向かって一方向に拡大したわけではありません。2000年代以降にみられるのが都心回帰の動きです。バブル期の地価高騰で郊外へ流出した人口が、利便性の高い都心に戻る動きが加速しています。この結果、都の昼夜間の人口差は、1995年をピークに2000年代以降縮小に転じています。

 グレーター東京圏は、圏域拡大で過密を避けつつ、経済成長に欠かせない要素である人口集積を果たしてきました。都県境を越えた移動や交流が日常化し、経済活動や市民生活の両面で一体的な地域として成長してきました。

 しかし、1都3県で産業構造や財政力、住民サービスなどに格差も顕在化しています。国内の他地域から一極集中と批判されるまで、規模が拡大したことに伴う歪みもみられるようになってきています。今後、東京が国際競争力を維持するためにも、共通の課題解決で連携を強化する広域の視点が欠かせなくなっています。

(2025年10月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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