東大の教員が相次ぎ逮捕される事態は前代未聞で、大学運営への信頼性が揺らいでいます。日本屈指の研究大学で起きた汚職事件の衝撃は大きく、教育・研究機関として社会の信頼を著しく損ねることになりました。これら不祥事は、10兆円ファンドによる支援を受ける国際卓越研究大の審査にも大きな影響を及ぼすことになると思われます。
要因としては、まず医学部教員の倫理意識の希薄さがあげられます。現在では毎年9,000人以上もの多くの医師が誕生するので、各大学医学部学生の教育課程における倫理教育の欠如があるように思えます。今こそ医療倫理の四原則、①自律尊重、②無危害、③善行、④正義を思い起こすことが大切です。特に正義原則が大切であり、医学研究の過程で不正な行為をすることは、私たちの共有財産を損なうことを忘れてはなりません。
二番目には、民間資金の受け入れに対する大学のチエック機構が機能していないことが大いに関与しています。国立大は国の運営費交付金が削られ、自らが資金を調達する必要性に迫られています。しかし東大は国立大で最大の年間800億円程度の運営費交付金を国から受け、民間企業からも多くの資金を獲得しています。民間と研究を進める産学連携においては、大学が民間資金を得る建て前となっていますが、研究者と民間との癒着が避けられない構造がみてとれます。また東大医学部は多くの教職員や研究機関を抱える巨大組織のため、各学部の裁量が大きく、ガバナンスが及びにくい状況にあります。
三番目は、旧態依然とした医学部が持つ閉鎖的でヒエラルキーの強い組織風土が、組織内で問題点を提起できない状況を作り出していることにあります。個々が小さな組織であるため、組織内でオープンな対話を通した風通しの良い環境が無いことが問題です。教授や准教授の行動に対して、不正があったとしても異議を唱えることはなかなかできません。
最後に強調したいことは、東大教員であることによる過度な期待、慢心、自分自身の認識誤認などがあることです。一定の立場以上になると自らを誤認する人はどの社会にも見られますが、東大のようなブランド力の高い大学では特に多いように思われます。地方の大学においても、教授になると教授という地位に纏わる威光に左右され、自己の能力とは異なった評価を受けて、悪しく変貌する方も多くみられます。他大学の教員も今回の問題を他山の石として自らを律することが大切となります。
(吉村 やすのり)





