欧州との雇用形態の差違

 欧州では、仕事の価値を客観的な基準で評価し、価値が同じと判断すれば同水準の賃金が払われる仕組みが定着しています。英国では、1970年に同じ仕事に就く男女を賃金などで差別しない同一賃金法が成立して以降、法的設備が進みました。欧州連合でも加盟国にパートタイム労働者への差別を禁止する指令を出すなど、雇用形態にかかわらず、雇用者は同一労働に就いている人に同水準の賃金を払う仕組みは根付いています。
 同一労働同一賃金の徹底は、人件費増につながる可能性もあるため、企業に強制すれば競争力を損なわせるとの意見もあります。企業が自発的に取り組むのを期待するのは難しく、企業に促すにはさらなる法的な枠組みなどの整備が必要になります。英国やスウェーデンは、法だけでなく、労使交渉で職務評価の方法を決めている点に特徴があります。労組にも専門家がいて、労使が納得して賃金が決まります。欧州は職務給で、雇用形態の違いによる差はあまり問題にならないとされています。日本の正社員は、勤続年数や責任を考慮した職能給がまだ主流です。非正社員の賃金には、働いている地域の相場が大きく影響します。正社員と非正社員を同じ基準で評価できる方法を開発する必要があります。

(2016年2月29日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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