正社員比率の低下が意味するもの

終身雇用が揺らぎ、正社員の割合は低下傾向にあります。総務省の労働力調査によれば、正規の職員・従業員数は2019年平均で3494万人で、雇用者(役員除く)全体に占める割合は、61.7%と低下傾向にあります。若者やシニアを中心に、非正規で働く人の増加ペースは正規を上回っています。2019年は2,165万人増えています。雇う側の事情も大きく影響していますが、働く側の意識も変わっています。現在の雇用形態を選んだ理由を聞くと、自分の都合の良い時間に働きたいからが、625万人と最多となっています。正規の仕事がないからも236万人いますが、男女とも減っています。
日本と諸外国の勤続年数を見比べると、日本の12.1年に対して米国は4.2年、韓国も5.9年と短くなっています。ワークライフバランス先進国とされる北欧も10年未満が多くなっています。わが国の正社員制度にほころびが見えてきています。高度経済成長を支えた終身雇用や年功序列などの仕組みが、今は逆に日本企業の競争力をそいでいます。人事ローテーションで会社の事情に詳しい人材は育ちますが、イノベーションを起こすスペシャリストが育たないことが指摘されています。
企業によっては、正社員にあえて退社してもらい、業務委託契約を結び直す大胆な施策を打ち出し、会社と働く側の新たな関係性を探る試みもなされています。働き方改革がこの変化を後押ししています。副業を容認する職場が増え、フリーランスで働く人にも注目が集まっています。内閣府が初めてまとめた推計では、フリーランスは306万~341万人と働く人の5%程度に達しています。
しかし、影を落とすのが新型コロナウイルスの感染拡大です。補償の乏しさなど非正規・フリーで働く課題が、改めて浮き彫りになってきています。短期的に見れば、フリーの仕事は減る可能性が大きくなっています。しかし、ネットビジネスの広がりなど産業構造は変化し続けています。中長期的に多様な働き方が広がる潮流に変わりはないだろうと思われます。

(2020年4月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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