正規と非正の格差

非正規雇用の増加の背景には、人件費が安く、雇用の調整弁として使いやすい人材を企業が望んだ点が大きいのですが、都合の良い時間に働きたいという働く側の希望もあります。低賃金や不安定は、働く時間や契約期間が短いためで、働く側が納得していれば問題ないように見ます。しかし、職場での教育訓練機会に乏しく、一度非正規になると正規に移りにくい雇用慣行が、格差の固定化を生んでいます。
賃金水準や教育訓練機会、厚生年金加入、有配偶率でも、正規と非正規には大きな差があります。正社員は、年功序列型賃金や長期安定雇用が保証される代わりに、いつでも・どこでも・何でもという無限定で、滅私奉公的な働き方が求められてきました。こうした働き方が評価される限り、待遇格差は是正されづらく、是正の効果は、正社員と同じように働く一部の非正社員にとどまると思われます。無限定的な働き方は、男女格差や少子化にもつながり、持続可能ではありません。
日本はこれまで、大企業を中心に企業が社員を教育し、終身にわたってその家族の生活も支える日本型と呼ばれる雇用システムを築いてきました。しかし、長寿化により、産業構造の変化はもちろん、個人の健康やライフスタイルの変化を考えても、働き方の変革は必至といえます。

(2020年12月20日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。