厚生労働省の試算によれば、就業者全体のうち就業時間を増やしたいは6.4%に過ぎませんでした。変えたくないが74.9%と減らしたいが17.6%で、合わせて全体の9割以上を占めています。増やしたい労働者の約半分にあたる3.3%は、契約で決まっている労働時間が週35時間未満かつ年収が200万円未満でした。パートやアルバイトで働く女性を中心に、いわゆる年収の壁を気にせずに働きたい層が多いと思われます。
2019年施行の働き方改革関連法は、残業時間に初めて上限規制を設けていました。月45時間、年360時間を原則とし、6カ月平均80時間、最大でも単月100時間未満とし、年720時間を上限とするルールを罰則付きで導入しています。
残業規制の一つである月平均80時間を超えて増やしたい労働者は0.1%にとどまっています。労働者側からの上限規制緩和のニーズは数字の上では大きくありません。経営者側は、残業の規制は必要とした上で、より柔軟な働き方を検討すべきだと主張しています。あらかじめ労使が決めた時間を働いたとみなす裁量労働制の対象となる人の拡大や導入手続きの緩和などを求めています。労働者側は、長時間労働を助長しかねないとしています。

(2025年10月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)