母乳のインタ-ネット販売について憶う

 不衛生な母乳がインタ-ネットで販売されているという報道があり、厚生労働省が注意喚起を求める通知を都道府県などに出しています。母乳が十分に出ずに悩んでいる女性が、購入している可能性があると判断したためです。厚労省が2005年度に行った乳幼児栄養調査では、96.0%の妊婦が母乳で育てたいと考えています。実際に母乳のみで育てているのは生後3か月で38.0%、ミルクを併用する混合栄養が41.0%と最も多く、ミルクのみが21.0%でした。現在では、母乳のみで育てている母親は、もっと増加していると考えられます。
 現在、完全母乳を推進する産院が多く、母乳が出ない母親は、本人の努力が足りないからだと母親失格のような感覚を覚えることがあります。母乳の出やすさは、出産した施設や地域サポ-トの体制に大きく影響されます。赤ちゃんに十分な量の母乳が出ないとしても、母親の責任ではありません。母乳をネットで購入するほど追いつめられた気持ちになる必要は全くありません。母乳が出ないのは本人の努力不足でもなんでもありません。何が何でも母乳をといった、最近の人工栄養の宣伝もできないような状況は、あるべき姿とは思われません。働く女性にとっては人工栄養も必要です。母乳やミルクの科学的根拠の正しい情報を伝え、実際にどうするかは母親に決めてもらい、その選択を尊重する姿勢が重要です。

(2015年7月9日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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