母乳バンクは、2014年に国内で初めて昭和大学江東豊洲病院にできました。同大学小児科が2017年、運営主体として一般社団法人日本母乳バンク協会を設立しました。早産だとまだ母乳が出ないことがあります。母親が病気で与えられないこともあります。母親から無料で提供された母乳(ドナーミルク)を、1,500g未満で生まれた赤ちゃんに無料で届ける仕組みが母乳バンクです。多くの医療機関では、早く小さく生まれた赤ちゃんには、人工乳を与えています。
人工乳でも元気に育つ子は多いのですが、母乳を与える利点はたくさんあります。消化吸収されやすく、免疫を高める効果があります。早く小さく生まれた赤ちゃんが罹りやすい病気の予防になり、重症化しにくくします。脳は妊娠28週から急激に成長することが分かっています。早産の母親の乳には、神経発達を促すDHAやたんぱく質などの成分が多く含まれています。母乳が得られない場合に、一定期間早く小さく生まれた赤ちゃんが母乳バンクを使うことは意義があるとされています。
しかし、国内では母乳バンクの広がりはあまり見られません。低温殺菌の機器や専用の個室など、母乳バンクのための設備に約500万円、人件費や検査費などに年約400万円かかります。一般に、家庭の経済状況に左右されず必要な赤ちゃんがドナーミルクを飲めるように、利用者から料金を取っていません。医療機関は、必要な費用をどう確保するかが課題となります。母乳バンクは、欧米や中国、インドなど約50カ国に約600施設あります。カナダやアメリカでは、毎年2、3カ所ずつ新設されています。
(2019年7月31日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)