早産で生まれた低体重の赤ちゃんに、寄付された母乳(ドナーミルク)を提供する母乳バンクの大型拠点が、4月に東京都内に新設されました。母乳は免疫力を高める効果があり、低体重の赤ちゃんを守る薬ともいわれています。早産の場合、母乳が出にくい母親が多いのに対し、全国で母乳バンクは新設を含め都内の2カ所しかなく、利用できる病院も限られています。
母乳バンクは、ドナー登録した女性が寄付した母乳を低温殺菌処理して冷凍保管し、病院の要請に応じてNICUへ提供する仕組みです。世界で60を超える国に750カ所以上あります。ドナーには、自分の子どもに与えても母乳が余る人が登録します。わが国におけるドナーミルクの保存期間は6ケ月です。
日本では、年間約7千人の赤ちゃんが1,500g未満の低体重で生まれます。母親の母乳が出づらいなどの理由で、ドナーミルクが必要とされる赤ちゃんは推計5千人にも達します。早産児は母胎で育つ途上のため臓器が未発達で、壊死性腸炎などの病気に罹るリスクがあります。母乳は栄養バランスが良く、消化管を成熟させる効果があり、こうした病気の罹患率を低減させることが、国内外の研究で分かっています。母乳中に含まれるヒトミルクオリゴ糖が、壊死性腸炎の予防に重要とされています。
(2022年7月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)