母子感染症シリ-ズ―Ⅵ

ヘルペスウイルス

 妊娠中に新たに単純ヘルペスウイルスに感染した母体の70%が無症状、あるいは症状を自覚しないとされ、母子感染の完全な予防は困難です。分娩中の胎児へのウイルス曝露を極力少なくする努力が、母子感染予防の観点から望まれます。妊娠末期の産道感染による母子感染率は、初感染では3060%、再発型では03%と報告されています。初感染初発型では、病変部ウイルス量が多く、子宮頸管からのウイルス分離陽性率が5060%と高率で、母体のlgG中和抗体ができていません。そのため、児は産道でウイルス曝露を受けやすく、ウイルス排除もできにくく、母子感染率が高くなります。再発型では、母体ウイルス量が少なく排泄期間も短く、母体抗体が胎児に移行するため、経腟分娩しても、母体感染率は低いとされています。この観点から、分娩が初感染発症から1か月いないならば、児は母体から抗体移行でまだ守られていない可能性があるため、帝王切開を選択することが多くなります。
生後28日までに発症した場合には新生児ヘルペスと診断します。頻度は、1/14,00020,000出生とされています。30%は生後1日で、ほとんどが生後1週間以内で発症します。胎内感染、産道感染、分娩後の水平性感染が考えられます。また外陰にヘルペス病変を認めない妊婦でも、新生児単純ヘルペス感染症が起こることがあります。乳頭周囲のヘルペスでは、授乳が制限されます。口唇、他の部位のヘルペス病変を認める場合には、厳格な手洗い、消毒用アルコ-ルによる手指の消毒と原病の治療を指導します。

(吉村 やすのり)

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