毎日新聞の調査によれば、全国の国立大学病院が昨年初めて公表した民間企業などからの資金提供の状況(2014年度分)の総額は約692億円に上り、このうち提供元が明示されているのは24%にとどまることが明らかとなりました。提供元が分かるのは主要な製薬企業だけで、医療機器メーカーや研究資金を助成している財団法人などは、全て「その他」の扱いで名前が伏せられていました。受領した資金は、契約に基づく受託研究などの研究開発費、研究振興などを目的とした奨学寄付金、研究者個人に支払う講師謝金や原稿執筆料、コンサルティング料、接遇費などに分類されます。
大学病院側が名前を開示したのは、業界団体日本製薬工業協会(製薬協)の加盟社からの提供分のみです。製薬協は12年度分から、奨学寄付金や原稿料などを渡した研究室や個人名を公表するガイドラインを設けており、受け取る側もそれに対応しています。一方、製薬協非加盟の製薬企業や医療機器メーカーの一部も同水準の情報開示を始めていますが、病院側は公開していません。近年、公正さを担保するために、利害関係のある企業との金銭面などの関連の有無を透明化することは必要なことであり、利益相反的な関係に陥らないためにも公明正大さが要求されます。
(2016年1月24日 毎日新聞)
(吉村 やすのり)
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