国税庁の民間給与実態統計調査によれば、1年を通じて勤務した給与所得者は2024年に5,137万人です。うち年間の給料や手当、賞与の合計が1千万円超の人は男性286万人、女性34万人の計320万人で、全体に占める比率は6.2%です。1千万円超の人を男女別でみると、大半の業種は男性が8~9割超です。これに対して医療・福祉は女性が3割近くを占めています。
増加の一因は、近年の賃上げの流れです。働き手の間ではより高い収入を求めた転職が盛んになり、人材の価値を最大限に引き出す人的資本経営が大企業で広がっています。2024年は平均給与も前年比3.9%増の478万円(男性587万円、女性333万円)と伸びています。給与は、一般に中小企業より大企業の方が、勤続年数の短い人より長い人の方が高い傾向にあります。
1千万円超の人が占める比率を14業種別にみると、電気・ガス・熱供給・水道は働き手の28%と最も多く、平均給与も832万円と最も高くなっています。次いで金融・保険、情報通信の比率が多くなっています。一方で宿泊・飲食サービス、郵便局や協同組合などの複合サービスは3%未満でした。機械化やシステム化を進めやすい業種は高水準で、労働集約型のサービス業などが低い傾向がみられます。
全業種の平均給与を年齢別でみると、男性は50代まで右肩上がりとなる年功序列型がくっきりと表れる一方で、女性は全年代で横ばいです。2024年を2014年と比べると、男女ともに底上げされています。しかし、男性の40代後半~50代前半は、他の年代より伸びの低さが際立っています。企業側は、転職の活発な30~40代前半と、65歳への定年引き上げに伴う対応として50代後半~60代前半を中心に、重点的に処遇改善している可能性があります。

(2025年10月19日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)







