海外での研究者の減少

日本の若手研究者らの海外離れが深刻になっています。中長期にわたり海外に渡航する研究者数は、過去に20年ほどで4割も減りました。グローバルに活躍する研究者の減少は、深刻化する日本の科学技術力低下の大きな要因になっています。文部科学省の調査によれば、中長期にわたり海外に派遣される研究者数は、1990年代後半から2000年にかけて7,000人を超えていましたが、直近では4,300人に減少しています。文部科学技術・学術政策研究所が引用数が、上位1%に入る優れた研究論文を分析したところ、日本の研究者が携わる研究領域数は米国だけでなく、英国、ドイツ、中国を大きく下回っています。
背景にあるのが、帰国後にポストが得られないことへの不安です。日本の大学などでは正規の研究職の枠が限られ、任期付きの不安定な雇用形態が増えて若手研究者などが海外に渡航することをためらわせています。国立大学の法人化後、運営費交付金の減少などで大学の経営環境は厳しさを増し、大学も海外に人材を送り出す余裕がなくなっています。こうした状況をテコ入れするため、政府は、若手研究者が海外で長期の研究に参加できるよう環境を整えることにしています。現在は研究費を受給する間に海外の研究機関で1年以上過ごすと受給資格を失いますが、2年以内に戻れば資格を継続し未使用分を受け取れるようにします。

 

(2018年11月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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