消費増税の延期

 消費増税の延期に対して、政策研究大学院大学の井堀教授が日本経済新聞で解説されています。


  消費増税が先送りされたことで、財政再建の道筋は遠のきました。先送りされた10%という消費税でさえ、国際的に見ればまだ低い税率です。欧州諸国では20%前後が付加価値税の標準的な税率となっています。また所得税も国際比較でみると、わが国の負担はそれほど重くありません。税金や社会保険料負担の合計である国民負担率(国民所得比)でみても、日本は米国とともに欧州主要国より低くなっています。日本は、潜在成長率が低迷する中で、社会保障費が拡大するという構造的要因で財政赤字が累増しています。消費税収は国税の3割程度であり、消費税収入だけでは社会保障費すら賄えない状況です。既に巨額の国債残高があり、今後も社会保障需要の増大が避けられない厳しい財政状況を勘案すると、消費増税なしで財政再建が実現できるほど日本の状況は甘くないと思います。
 少子高齢化社会で日本経済が直面する成長へのハードルや、社会保障制度への弊害などを考慮すると、現在世代よりも将来世代がより厳しい経済環境に陥ります。若い世代や将来世代がまともな生活設計をできるように財政や社会保障制度を持続可能にするには、勤労世代への所得増税だけでは不十分です。社会保障給付の効率化・削減を最優先課題として、世代間格差を助長している社会保障制度を抜本的に改革する必要があります。例えば公的年金の支給開始年齢を早めに70歳まで引き上げ、将来には80歳まで引き上げるといったことも考えなければなりません。また医療制度でも、高齢者の自己負担額を現役世代並みに3割に引き上げることも必要かもしれません。こうした大胆と思える社会保障歳出の効率化や削減に早急に取り組まなければ、国家存続の危機に瀕します。なりません。改革には痛みが伴うことを国民一人一人が自覚しなければなりません。

(2016年6月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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