消費税が原因で病院経営が悪化し、設備投資もままならないという状況に陥る病院が増えています。2017年4月に消費税が上がれば、さらに危機的になると思われます。そもそも患者は病院窓口で消費税を負担していません。1989年に消費税が導入された時、健康保険証を使って受ける医療は非課税とされました。医療は一般のサ-ビスと違うとの考えからで、患者は病院や診療所の窓口で消費税を負担しないことになりました。医療機関が医療機器や設備などを購入する際には消費税がかかりますが、患者からは消費税を取れず、税負担を転嫁できません。
消費税を巡る問題の深刻さは、医療機関の規模や種類で異なります。大病院にとっては大きく、街の小さな診療所や慢性病、精神疾患向けの療養型病院などはそれほどではありません。診療所や療養型の病院などは最新機器を導入するといった設備投資が比較的少なく、消費税負担も小さい傾向があります。このため初診料などの診療報酬の引き上げによる増収効果の方が消費税負担よりも多い場合もみられます。一般病院全体では赤字幅が拡大しましたが、それより規模が小さい診療所は黒字を維持していました。
(2015年11月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)