女性が双胎以上の多胎児を妊娠した場合、母子の安全を守るために胎児を薬物注入によって中絶することを減数手術と呼びます(減胎手術とも呼ぶこともあるが、減数が一般的)。
今回、第31回日本受精着床学会において異常がある胎児を選んで中絶する減数手術が36例行われたとの発表がありました。それによると中絶する胎児は、羊水検査や超音波検査にて異常と診断された児を選別したとしていますが、全例において羊水検査をされたわけでもなく、超音波診断(頸部に浮腫がある場合など)だけで中絶をしたケースもあるようです。減数手術された胎児に実際に異常があったかどうかの確認はされていませんし、分娩後ではそれを確認することはできません。また羊水検査で異常を確認した例でも、後になって減数手術をする際に確実にその異常児を同定して中絶できるのかという技術的な問題も残ります。
一方、この4月からはダウン症などの有無が血液検査で分かる新型出生前診断が始まっています。この場合も異常が判かったら羊水検査で確定診断の上、ほとんどのケースで中絶されています。この出生前診断においては、遺伝カウンセリング体制が整った施設で臨床研究として実施されています。この新型の出生前診断では、現時点では21‐、18‐、16‐トリソミーの診断を行うのであり、遺伝カウンセリングにおいて具体的にどのようなカウンセリングがなされるのでしょうか。確かにさまざまな遺伝病を診断するために行う羊水検査においては遺伝カウンセリングが必須です。胎児の染色体異常に対してのカウンセリングには、遺伝カウンセリングより心理カウンセリングが大切になると思われます。
≪読売新聞掲載≫
(吉村 やすのり)