温暖化が招く流産リスク

 地球温暖化の影響によって、妊婦が高温にさらされると、流産や死産、低体重の子どもが生まれる危険性が高まるとする研究成果が出てきています。英国のインドでの研究では、暑い屋外で農業や建設業に従事する妊婦は、流産や死産の確率が高まるとされています。

 発展途上国では暑い屋外で働く妊婦も多くなっています。低所得層の住宅には空調が無かったり、長時間の使用をためらったりする場合があります。暑すぎる環境は、脱水症状などを引き起こし体に負荷がかかります。炎天下の作業を避けさせるなどして、妊婦や子どもを守る必要あります。

 西オーストラリアの研究では、先進国でも極端な高温のために子どもが低体重で生まれるリスクが高まるとされています。妊婦が暑さから体に受けたストレスを気温や風速から算出し、生まれた子の体重との関係を分析し、熱に伴うストレスで低体重のリスクが11%高まったとしています。特に妊娠後期で影響が強くみられます。妊娠時には体温調節が難しくなり、高温にさらされると体の負担が増し、胎児に酸素や栄養が届きにくくなる可能性があります。

 生まれた子どもにも配慮が必要です。ユニセフは2020年代に世界の子どもの2割にあたる約4億6,600万人が、摂氏35度を超える暑い日を頻繁に経験しているとしています。酷暑の日数は1960年代の2倍以上で、過度の熱ストレスは、子どもの栄養不良やマラリア、デング熱への感染につながります。次の世代を担う子どもたちは大人よりも長く影響を受けます。

(2025年3月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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