潰瘍性大腸炎の治療薬の進歩

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性の炎症が起こる病気で、国の指定難病であり、根本的な治療はありません。厚生労働省研究班の疫学調査によれば、国内の患者は約21万人とされています。近年、潰瘍性大腸炎の新しい治療薬が、相次いで登場しています。以前は下痢や腹痛などに長く苦しむ患者も多かったのですが、治療を続けることで、日常生活に支障がないように症状を抑えることができるようになっています。
2010年以降、体の中で炎症を引き起こすTNF-αという物質の作用を抑えるヒュミラやレミケードのような抗体製剤が、潰瘍性大腸炎の薬として認められました。ステロイド薬などが効かない場合でも、症状が落ち着いて安定する寛解に導けるようになっています。最近も2017年にシンポニー、昨年はエンタイビオやゼルヤンツなど新薬が相次いで登場、他にも10以上の新薬候補の治験が進んでいます。
新薬の登場に加えて、治療の考え方も変化してきています。従来の治療目標は、症状を抑えることでした。しかし、粘膜の傷やただれがしっかり治ったことが、内視鏡検査で確認されるまで、治療を続けることが大切であるとされています。適切な治療で症状が安定していれば、基本的に食事制限は必要ありません。学業や仕事などに影響はなく、妊娠・出産もできます。

 

(2019年4月17日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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