森林喪失の主要な原因が、熱帯雨林の違法伐採から、温暖化に伴う寒冷地や温帯での森林火災に変わりつつあります。森林が減ればCO2の吸収が減り、温暖化が加速する悪循環に陥ります。森林はCO2を吸収する貯蔵庫です。森林が燃えるとCO2が大気に放出されます。温暖化ガスの排出抑制に取り組んでも、CO2の濃度や気温の上昇を抑えられなくなります。
英イーストアングリア大学の研究グループによれば、2001年から2023年までに森林火災に伴うCO2排出量が6割増えたと計算し、地域ごとの違いを分析しています。CO2が増加した主な原因は、熱帯以外の地域でした。2001年から2023年までに排出量は約5億t増えています。ブラジルやカナダなどの大国がエネルギー消費で出す1年分に相当しています。特に影響が大きいのがカナダやアラスカなどの寒帯の森林です。CO2の排出は20年前の3倍になっています。
2023年には気温の上昇と乾燥によって、アラスカとカナダで前年の約6倍にあたる1,770万haの森林火災が起きています。アラスカとカナダの森林火災で、2021年から2050年までに出る温暖化ガスの排出量は、自動車26億台の1年分に相当すると推計されています。
アラスカやカナダには北半球の陸地面積の約4分の1を占める永久凍土があります。この土壌はCO2やメタンなどの温暖化ガスを多く含んでいます。寒冷地では世界平均よりも温暖化が進んでいるため、火災のリスクが高まります。火災が頻発すれば、想定より多くの温暖化ガスが放出される懸念があります。 アマゾンでも、湿潤な熱帯雨林で乾燥が進むダイバック現象が起きています。アマゾンなどの熱帯周辺には雨雲を作る上昇気流を生む熱帯収束帯と呼ぶ場所がありますが、気候変動で北上して降水量が減り、アマゾンが乾燥したサバンナのようになり、山火事が起きると予測されています。森林を失えば気温の上昇や気象災害にも直結します。
(2024年12月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)