文部科学省は、全国の大学病院で働く医師・歯科医師のうち、無給医に関する調査を実施しました。その結果2,191人が給与を支払われていない無給医であることが分かりました。大学院生らが自己研さんや研究などの名目で診療していましたが、実質的には労働行為に当たり、各病院は遡及して給与を支払うといった対応を決めています。無給医の多くは雇用契約を結ばず、労災保険に未加入でした。無給医を巡っては、過去に雇用契約を結ばないまま診療する大学院生の存在が問題化し、文部科学省は、2013年に大学院生の雇用率100%を確認していました。しかし、大学病院側が、自己研さん名目の医師らを除外するなどしており、多数の無給医の存在が明らかになっていませんでした。
今回の調査は、1~5月に全国の国公私立の99大学108付属病院を対象に実施しました。各病院に大学院生や研修医、非常勤助手など教員以外の医師・歯科医師について、2018年9月時点の給与の支給状況と、弁護士や社会保険労務士ら専門家に相談して決めた今後の対応を報告させました。調査によれば、対象者の3万1,801人のうち、50病院の2,191人(7%)が無給医で、このうち合理的な理由なく給与を払っていなかったのは751人(27病院)に上っています。各病院は、最大2年を遡って支払うことになります。大学の教員の定数が決まっている大学病院は、人手不足になっており、無給医が補っています。無給医は生計を立てるために、外部でアルバイトで診察するなど長時間労働になっています。
(2019年6月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)