父子関係認めず 大阪家裁、性同一性障害者の請求棄却―Ⅰ

性同一性障害で性別を女性から変更したが、第三者から精子提供を受けて妻が出産した次男と父子関係があることの確認を求めた訴訟の判決で、大阪家裁は13日、請求を棄却した。民法は妻が婚姻中に懐妊した子を「夫の子と推定する」と規定しているが、久保井恵子裁判官は「母が父との性交渉で次男を懐妊することが不可能だったのは戸籍の記載から明らかだ。民法の推定は及ばない」と判断した。男性側は、同様に父親欄が空白の長男の戸籍訂正を求める審判を申し立てたが、東京家裁、高裁は認めず、現在最高歳で係争中である。次男については戸籍訂正の審判ではなく、父子関係を確認する訴訟を起こした。

 最近、性同一性障害で戸籍上の性別を女性から男性に変更し、別の女性と法的に婚姻した後に、AIDを用いて挙児を希望するカップルがわが国でも増えてきている。法的に婚姻している夫婦であり、希望によりAID治療を実施することは、日本産科婦人科学会の会告にも抵触しない。しかしながら、今回の判決は生まれた子どもに対して嫡出子として戸籍に登録することはできないとの判断を示している。

 嫡出子として認められない場合、親子関係を創設するために夫が生まれた子を「認知」することができる。もし認知が認められれば、クライエント夫婦の嫡出子となり、生まれた子どもは相続などの法的不利益を被らないことになる。ところが夫が生物学的に女性であるため、「認知」も認められない可能性がある。今回のように嫡出推定も認知も認められない場合、性同一性障害カップルのAIDで生まれた子どもは妻の非嫡出子となり、父のいない子になってしまう。これらカップルへのAIDの治療は、法的な親子関係が作れないことを前提に子をつくる治療となってしまう。これは重大な問題である。          《Ⅱにつづく》

                           

                              《朝日新聞 9/14》

(吉村 やすのり)

 

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。