片頭痛の新しい治療法

 片頭痛は、脈拍に合わせるかのように激しい痛みが、頭の片側を襲うものです。痛みが4時間から3日間も続くことがあります。吐き気をもよおす例が多く、体を動かすと痛みが強くなるため、寝込んでしまうこともあります。発症の詳しい仕組みはよく分かっていませんが、脳の血管を収縮させる作用などがある神経伝達物質セロトニンが関係していると考えられています。セロトニン量が急に変化すると、いったん収縮した血管が拡張し、神経を刺激して痛みが出ます。
岡山大学が20156月から始めた片頭痛の新治療は、心臓の左右の心房を仕切る壁にある卵円孔と呼ばれる小さな穴を塞ぐというものです。もともとは脳梗塞の再発を防ぐための方法でした。卵円孔は成人の1525%が持っており、脳梗塞患者で穴が見つかった場合、手術することがあります。手術を受けた脳梗塞患者から片頭痛の症状がよくなったとの声が相次ぎました。治療した38人のうち19人が片頭痛を経験していましたが、治療後に13人の痛みが消え、5人が顕著に改善しました。静脈血に多いセロトニンが卵円孔を通過し脳に達して頭痛を起こしていましたが、穴を塞いでセロトニンが運搬されなくなったことが関係しています。しかし、この治療法は片頭痛向けには健康保険が適用されません。入院を含む費用約130万円は自己負担となります。

(2016年1月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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