わが国の消費者物価の下落が際立っています。総務省の発表によれば、物価上昇率は全品目の総合で7カ月連続、変動の大きい生鮮食品を除いても9カ月連続で前年同月比マイナスとなっています。米国は上昇が加速し、ユーロ圏もプラスが続いています。景気回復の速度の違いが物価にも鮮明に表れています。
3度目の緊急事態宣言により、消費には逆風が吹き、物価を押し上げる力は弱くなっています。ワクチンの普及で景気回復が進む米国は物価も上向きです。4月の消費者物価指数は4.2%上がり、2008年9月以来の高い伸びでした。ユーロ圏も1.6%上昇し、伸びが加速しています。
日本は、長く続いたデフレから完全に脱却できないまま低成長が続き、2018年秋から景気後退局面に入っています。さらに2019年秋の消費増税や2020年春以降の新型コロナウイルス禍が重なりました。経済の停滞が続く苦しい状況が、物価にも影を落としています。
(2021年5月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)