2024年4月には、労働基準法が改正され、物流業界でトラック運転手不足などが懸念されています。自動車運転業務は、時間外労働の上限が年960時間(月80時間)となります。現状は労使が合意すれば実質的に制限はありません。休憩や待機などを含む拘束時間は、現状より216時間短い年3,300時間にします。月21日の稼働時間を想定した場合、1日あたり14時間から13時間程度に短くなる計算となります。
厚生労働省の調査によれば、トラック運転手の収入は全産業平均を下回っています。労働時間短縮で長距離輸送などが難しくなると、運送会社の業績が悪化し、運転手の収入減につながる恐れがあります。担い手不足が深刻化し、物流網が混乱する可能性も指摘されており、業界の構造改革は急務になっています。
運送会社のデジタル化を支援するスタートアップは、需給に合わせた最適な運賃を算出するシステムを開発しています。2つの運送会社をマッチングし、輸送を分担できるようにしたり、長距離輸送に伴う運転手の待機時間や渋滞に巻き込まれるリスクを減らし、輸送コストの圧縮にもつなげます。搬入先となるトラックの運転手の待機時間を短くすることも必要です。2024年問題を乗り切るためには、物流業界が新たな事業環境下で収益力を高め、運転手の待遇を改善する流れを生み出せるかどうかにかかっています。
(2023年3月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)