献体とは

 医師や歯科医師を目指す医学生は、全員人体解剖実習をします。私たちが学生であった頃、1970年代半ばまでは実習に必要な遺体が不足し、医学教育の危機と言われた時期がありました。その後いわゆる献体法が83年にでき、献体運動が急速に広がりました。献体とは、大学の医学教育に役立てるため、ご自分の遺体を無条件・無報酬で提供していただくことをいいます。現在では解剖実習の98%が献体によるご遺体で、献体がなければ医学教育は成り立ちません。
 献体登録の申込先は、医学部・歯学部のある大学や地域の献体団体です。大学病院ではありません。無条件・無報酬で、病院での優先的な対応といった特典もありません。大切なことは、配偶者、子どもなど家族の同意を得ておかなければなりません。どれほど本人の意思が固くても、死去後に家族が登録先に連絡してくれなくては献体は不可能です。献体登録をすると、大学や献体団体などによる様々な式典や催しに参加する機会が得られます。こうした交流が心の糧になることもあります。

(2016年2月1日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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